甲府市自治基本条例をつくる会

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甲府市自治基本条例(意見募集案)

出典は平成19(2007)年4月1日 甲府市ホームページ、「自治基本条例に関する意見を募集します」の公開版ですが、条文と解説がPDFファイルで別ファイルになっていたものを統合しました。「全体の構造については市民案」に準じていると思いますのでご参照ください。
尚、第4章 議会と議員に関する部分については甲府市議会の提案がありましたので、「議会案」として保存してあります。

目次

前文
第1章 総則(第1条〜第3条)
第2章 基本原則(第4条〜第5条)
第3章 市民、事業者等(第6条〜第12条)
第4章 市議会と市議会議員(第13条〜第17条)
第5章 市長その他の執行機関(第18条〜第21条)
第6章 市政運営(第22条〜第29条)
第7章 市政への参画と協働(第30条〜第35条)
附則

前文

 私たちのまち甲府市は、あふれる光と清らかな水に恵まれた甲府盆地にあり、先人は輝かしい歴史を築きあげ、多彩な地域の文化を育んできました。
 いま、人と人、人と自然が共生し、平和で住みよいまちを発展させ継承していくために、私たちは、自律した自治のあり方を見据え、そのしくみをより確固たるものとしていかなければなりません。
 私たちは、主体的に生き、人を思いやる心を大切にし、市民と市議会と市長その他の執行機関の協働により、公正で平等な地域社会をつくり、市民の福祉の増進を図って、次の世代に引き継いでいきます。
 私たちは、甲府市民としての誇りと責任をもち、ここに、甲府市自治基本条例を制定します。

【解説】
① 前文は、この条例の制定の趣旨、目的、基本原則などを述べるもので、本文と一体をなすものとして本文各条項の解釈基準となるものです。
② 自治基本条例は、甲府市の最高規範として、自治の理念や基本原則などを定める重要な条例であり、それらを明らかにするために前文を置きました。
③ 「私たち」は、権利義務の主体である個人(自然人)としての市民を表す語句として使用しています。
④ 甲府市は、山岳地域をはじめとする美しい自然に恵まれ、全国の県庁所在都市の中で全国一の日照時間を誇る光が甲府盆地に降り注いでいます。
 金峰山を源流とする水は、市民の大切な生活の水であり、荒川として市内を流れています。盆地の地下には地下湖といえるほど多くの水が貯えられています。
 また、盆地に点在する古墳や遺跡、市内各地で伝承されてきた民俗行事など、人々は輝かしい歴史と彩りの文化を育んできました。
⑤ 人と人、人と自然が共生する中で、この平和で住みよいまちをさらに発展させ、次の世代に引き継いでいくためには、住民自治の確立を確固たるものにする、市民と市議会と市長その他の執行機関による「自律した自治」(自ら決定した規範等に従って行動し、その結果について自ら責任を負う自治)のあり方を見据え、自治のしくみを明確にしていくことが必要です。
⑥ 「甲府市市民憲章」に謳う「この甲府の市民であることに誇りと責任を感じ」の趣旨を踏まえ、市民、市議会、市長等が協働して起草した甲府市自治基本条例を制定します。

第1章 総則

第1条 (目的)
 この条例は、地方自治の本旨である住民自治と団体自治の考え方に基づき、市民、市議会及び市長その他の執行機関の役割と責務など自治を推進する基本的しくみを定めます。
【解説】
① 目的規定は、この条例の立法目的を示すものです。
② 自治基本条例は、市民、市議会及び市長その他の執行機関の役割と責務を明確にする中で、甲府市の自治を推進する基本的なしくみを定めていくことを目的としています。
③ この条例は、地方自治の本旨に基づき、「自治の基本原則」、「市民、事業者等の権利と責務」、「市議会と市議会の議員の役割と責務」、「市長その他の執行機関の責務」、「市政運営の原則」、「市民の市政への参画と協働」などを定めます。
④ なお、地方自治の本旨である住民自治と団体自治において、住民自治とは、地方の事務処理を中央政府の指揮監督によるのではなく、当該地域の住民の意思と責任のもとに実施することをいいます。 また、団体自治とは、国家の中に国家から独立した団体が存在し、この団体がその事務を自己の意思と責任において処理することをいいます。
第2条 (最高規範性)
この条例は、市の最高規範であり、市は、他の条例等の制定や改廃、また法令、条例等の解釈や運用に当たっては、この条例との整合を図らなければなりません。
【解説】
①  自治基本条例は、甲府市の条例体系の頂点にある条例として、自律した自治のあり方やしくみを定めるものです。
② この条例が市政運営における最も基本となる条例であることを明確にし、他の条例や規則などの制定や、改正、改廃に当たっては、自治基本条例との整合を図らなければならないことを定めることにより、自治基本条例が最高規範性を持っていることを明らかにしています。
③ 法令や県が定める条例等の解釈や運用に当たっては、この条例に基づき、「自主的な法令解釈と条例の制定」(第23条)を定めています。
第3条 (用語の意味)
 この条例において、次の各号に示す用語の意味は、それぞれ各号に定めるところによります。
(1) 市民 市内に住む人または市内で働く人、学ぶ人、事業その他の活動を行う人や団体をいいます。
(2) 住民 市内に住所がある人をいいます。
(3) 市長その他の執行機関 市長、教育委員会、選挙管理委員会、公平委員会、監査委員、農業委員会、固定資産評価審査委員会をいいます。
(4) 参画 市民が、政策の立案、実施、評価の過程に主体的に参加することをいいます。
(5) 協働 市民、市議会及び市長その他の執行機関が、それぞれの立場や特性を尊重し合い、自覚と責任を持って相互に補完し地域課題を解決するために協力しあうことをいいます。
(6) コミュニティ団体等 地域社会の中で地縁や共通の公共的関心事によってつながりを持ち、互いに助け合い、共通目的を達成するために結ばれた自治会等の団体、特定非営利活動法人、ボランティア団体等をいいます。
【解説】
① この条例の中で使われる用語のうち、認識を共通にしておきたい重要な用語として、「市民」、「住民」、「市長その他の執行機関」、「参画」、「協働」、「コミュニティ団体等」の意義や意味を定めています。
② 法令においては、住所の有無によって、権利や責務の内容が異なるため、この条例においても、その違いを明確にする必要があります。
 このため、甲府市に住所を有する者の用語を「住民」とし、「市民」は、市内に住所を有する人や市内の事業所に勤務している人、市内の学校に通学している人に加え、市内で市民活動をするなど、さまざまな活動を行っている個人、事業者、団体を示す用語として定めています。
③  「ボランティア団体等」には、ボランティア団体のほか市民活動団体を意味しています。

第2章 基本原則

第4条 (参画と協働の原則)
 市民、市議会及び市長その他の執行機関は、その独立性と対等性を互いに尊重し、参画と協働を推進します。
【解説】
① 前文で示した「自律した自治のあり方」を実現するための根本的な原則として、市民、市議会及び市長その他の執行機関が、その独立性と対等性を互いに尊重し、「参画と協働」していくことを定めています。
② 市民が市政に参画する権利は、「市民の市政に参画する権利と責務」(第3章第6条)で明らかにし、参画の具体的な内容を「市政への参画と協働」(第7章)に定めています。
③ 「協働」については、「市民との協働」(第7章第30条)に、しくみづくりをしていくことを定めています。
第5条 (情報共有の原則)
 市民、市議会及び市長その他の執行機関は、市政に関する情報を共有します。
【解説】
① この条例の基本原則である「参画と協働」を推進するためには、市民、市議会及び市長その他の執行機関のそれぞれが持っている市政に関する「情報の共有」が必要です。
② 「情報の共有」を維持するためには、「市民の知る権利」(第3章第8条)を保障するとともに、「市議会の情報の公開と説明責任」(第4章第14条)や、「市長その他の執行機関の情報公開」(第5章第19条)、「市長その他の執行機関の説明責任」(第5章第20条)に定めています。

第3章 市民、事業者等

第6条 (市民の市政に参画する権利と責務)
 市民は、年齢、性別、国籍等を問わず市政に参画する権利があります。
2 市民は、市政への参画に当たっては、自らの発言と行動に責任を持たなければなりません。
3 市民は、市政に参画しないことにより不利益な扱いを受けません。
【解説】
① この条文では、特に「自然人」としての市民の権利と責務を定めています。また、子どもや法人としての市民、事業者、団体の権利と責務については、「子どもの権利」(第10条)、「コミュニティ団体等の役割」(第11条)、「事業者の権利と責務」(第12条)に定めています。
② 市民の市政に参画する権利は、住民自治推進の観点から、市民の当然の権利です。
 この権利は、年齢、性別、国籍、人種、性的志向(ジェンダー)、政治思想、民族、宗教、身体、精神障害の有無及び社会的地位などを問わないものであることを明らかにしています。(編注・ジェンダー=生物上の雌雄を示すセックスに対し、歴史的・文化的・社会的に形成される男女の差異。また、その差異に対する知識。 〜大辞林 第二版)
③ 「市政」は、政策形成に限らず公共サービス活動も含め、広い意味での「市政」を指しています。
④ 政策形成への市民参画については、「市政への参画と協働」(第7章)で、「市民との協働」(第30条)や、「市民の要望の取扱」(第31条)、「市民の意見提出制度」(第32条)、「審議会委員等の公募」(第33条)、「直接請求と住民監査請求等」(第34条)、「住民投票」(第35条)を定めています。
⑤ 「市政に参画しない場合の規定」(第3項)は、権利と責務に関するものではありませんが、市政に参画しないことによる不利益な取扱を受けないために、市民と市との関係を特に定めています。
第7条 (市民の行政サービスを受ける権利と責務)
 市民は、行政サービスを受ける権利があり、その負担を分かち合わなければなりません。
【解説】
① この条文では、特に「自然人」としての市民の権利と責務を定めています。
② 行政サービスを受ける権利は、地方自治法第10条第2項の規定に、住所を有する「住民」がひとしく有する権利として規定されていますが、この条例で定める、市外からの通勤者や通学者を含めた拡張した「市民」の概念では、ひとしい権利として定められないため、単に行政サービスを受ける権利があることのみを定めています。
③ 行政サービスを受けるためには、税金や施設の使用料、証明書発行の手数料などの経済的な負担、協働でまちづくりをする事業などに自主的に参加することによる負担などを分かち合わなければなりません。
第8条 (市民の知る権利)
 市民は、市が保有する情報について知る権利があります。
【解説】
① 市民の知る権利は、情報の共有の権利を市民の権利として改めて明確にするものです。
② 市民の知る権利は、市が保有する全ての情報について、その権利を保障するものではなく、情報公開条例や個人情報保護条例で不開示とされている情報については、それぞれ条例の定める制限を受けることになります。
第9条 (市民の個人情報の保護に関する権利)
 市民は、市が保有する自己の情報について、開示や訂正などの適正な措置を請求する権利があります。
【解説】
市民には、市の実施機関が保有する個人情報の開示や、訂正、利用停止を請求する権利があることを明らかにし、市政の適正で円滑な運営を図りながら、個人の権利と利益を保護します。
第10条 (子どもの権利)
 子どもは、健やかに育つ権利があります。
2 子どもは、社会の一員として市政に参画する権利があります。
【解説】
① 子どもが家庭や地域、学校において、健やかに育まれる環境をつくる責務があることをさらに踏み込んで、この条文では、明日の社会を築き上げていく社会の珠玉である子どもを大切に育てるため、「子どもの権利」を定めています。
② 子どもが市政に参画する権利としては、まちづくり活動への参画やパブリックコメント等への参画が想定されます。
第11条 (コミュニティ団体等の役割)
 コミュニティ団体等は、住民自治を推進する担い手としての役割があります。
【解説】
① 「市民」のうち協働によるまちづくりの重要な担い手であるコミュニティ団体等について、特にその役割を定めるものです。
② コミュニティ活動は、地域住民や共通の課題に意識を持つ市民などによるコミュニティが自律性と自主性のもとにまちづくりの担い手となることを目指して取り組むものです。
③ これまでは、自治会などの地縁型のコミュニティが、自治の推進に大きな役割を果たしてきましたが、近年は、ボランティア、NPOなどテーマ型のコミュニティによる地域活動も活発化し、身近な問題は自分たちで解決する地域の問題であるという住民自治意識が高まるなど、これらが住民自治を推進する担い手となっています。
 甲府市では、まちづくり協議会と協働して、ふれあい事業、環境美化事業、子供を育む地域交流事業などに取り組んでいます。
第12条 (事業者の権利と責務)
 事業者は、市政に参画する権利と行政サービスを受ける権利があります。
2 事業者は、地域社会の一員として社会的責任を果たさなければなりません。
3 事業者は、行政サービスに伴う負担を分かち合わなければなりません。
【解説】
① 地域社会を構成する「市民」の一員である事業者について、特に、その担う役割と責務を明確にし、市政に参画する権利を保障するとともに、地域社会との調和を図るなど社会的責任を求めています。
② 「事業者」は、株式会社などの営利法人をはじめ、学校法人、社会福祉法人などの公益法人や、協同組合などの中間法人を指しています。

第4章 市議会と市議会の議員

第13条 (市議会の役割と責務)
 市議会は、住民の直接選挙により選ばれた市議会の議員で構成する議事機関であり、法令や条例に定める権限を行使し、市長その他の執行機関の市政運営の監視や抑制をする機能があります。
2 市議会は、政策論議や立法活動の充実を図ることにより、市政の発展と市民の福祉の増進を図ります。
3 市議会は、法令に定めるもののほか、条例で定めることにより市政の重要なことがらについて、その議決事項とすることができます。
【解説】
① 市議会は、住民を代表する市議会の議員によって構成された「議事機関」であり、条例の制定や改廃、予算の議決、決算の認定などにより意思決定を行うとともに、調査権、同意権、監査の請求権、請願の受理など法令や条例に定める権限を行使して、市長その他の執行機関の市政運営が適正に執行されているか監視や抑制する機能を持っています。
② 市議会は、議会における政策論議を深め、常に市民全体の福祉の増進を図るための実質的な審議を尽くすとともに、その活動に当たって、常に市民の意思を把握し、その意思を反映する条例(果実)を議決していきます。
③ また、条例で議決すべき事項を定めることができます。(地方自治法第96条第2項)
第14条 (市議会の情報の公開と説明責任)
 市議会は、積極的に情報の公開を図り、市民にわかりやすく説明をする責任があります。
【解説】
① 「基本原則」(第2章)に「情報共有の原則」(第5条)を定めるほか、本条に「市議会の情報の公開と説明責任」を定めるとともに、「市長その他の執行機関」(第5章)に「市長その他の執行機関の情報公開」(第19条)と「市長その他の執行機関の説明責任」(第20条)を定めています。
② 説明責任は、「情報共有の原則」(第2章第5条)及び「市民の知る権利」(第3章第8条)の前提条件となるものです。
③  市議会の会議等については、本会議のほか臨時議会、常任委員会、特別委員会、全員協議会など市議会が主催する全てのものが含まれます。
④ 市議会の情報公開については、甲府市の情報公開条例に基づいて実施されています。
⑤ 「市議会」においても、市民に対してCATVの放映や、会議録、議会だより、市ホームページなどで情報を積極的に公開し、これらの市議会の情報を市民にわかりやすく説明をする責任があります。
第15条 (市議会への市民参画と市議会の活性化)
 市議会は、市民の傍聴を積極的に受け入れ、市民との直接対話の場を設けるなど、市議会への市民参画を推進し、市議会の活性化を図り、開かれた市議会を目指します。
【解説】
 市議会への市民参画を促すため、「自然人」としての市民の権利としての傍聴権や請願権等の積極的な活用、委員会における公聴会制度や参考人制度の活性化、重要な市政課題等は市民と直接対話する場を設けることなどに取り組み、活発な議論が交わされる開かれた市議会の実現を目指します。
第16条 (市議会の議員の責務)
 市議会の議員は、住民の代表者として品位と名誉を保持し、自己研さんに努めるとともに、常に市民全体の利益を行動の指針とし、誠実に職務を遂行します。
【解説】
市議会の議員は、甲府市全域の住民を代表する者(市民の代弁者)であり、常に品位と名誉をもって行動することをはじめ、審議能力、政策調査、政策立案・提言能力を高めるための資質向上への絶え間ない努力、誠実に議員としての職務を行うことが求められています。
第17条 (市議会の議長の責務)
 市議会の議長は、誠実かつ公正な職務の遂行とともに、民主的かつ効果的な市議会運営に努めます。
2 市議会の議長は、市議会の議員の協力による円滑な議事運営を進めるとともに、事務局職員の知識と能力の向上を図ります。
【解説】
① 市議会の議長は、議会を代表する責任者として、円滑な議会運営を行えるよう努める職責があります。
② 市議会の政策立案機能を高めていく上では、議会事務局の法制能力の向上や議員の調査活動を支援する職員の強化が不可欠です。
③ 議長は、リーダーシップを発揮して、議員の協力のもとで円滑な議事運営を推進し、併せて職員の知識と能力の向上を図ります。

第5章 市長その他の執行機関

第18条 (市長その他の執行機関の責務)
 市に、選挙によって選ばれた市の代表たる市長を置きます。
2 市長その他の執行機関は、市民の多様な意見に配慮し、その意思を市政に反映させ市民の福祉の増進を図らなければなりません。
3 市長その他の執行機関は、それぞれ所属する職員の知識と能力の向上を図ります。
【解説】
① 憲法や地方自治法第139条(編注・第二節 普通地方公共団体の長)などの規定により、市長の設置が謳われていますが、自治の基本理念に基づき、市民から直接選ばれ、市民の信託に基づく市政を運営する市の代表としての重要な機関として市長の設置を改めて明記しています。
② 市長と教育委員会、選挙管理委員会、公平委員会、監査委員、農業委員会、固定資産評価審査委員会は、多様な市民の意見に配慮し、市民の意思を市政に実現させる責務があります。
③ 甲府市では、分権時代を担う情熱と創造力を持ち、自立した職員の育成を目指して人材育成の具体的推進を図るため、平成18年3月に「新甲府市人材育成方針」を策定しています。
第19条 (市長その他の執行機関の情報公開)
 市長その他の執行機関は、積極的に情報の公開を図り、公平で透明な市政運営に努めます。
【解説】
 市長その他の執行機関の情報公開については、「基本原則」(第2章)に「情報の共有」(第5条)を定めるほか、「市議会の情報の公開と説明責任」(第4章第14条)と同様、本条においても定めています。
第20条 (市長その他の執行機関の説明責任)
 市長その他の執行機関は、政策の立案、実施、評価の過程において、その内容、効果等について市民にわかりやすく説明をする責任があります。
【解説】
① この条文では、「市議会の情報の公開と説明責任」(第4章第14条)に説明責任を定めるとともに、市長その他の執行機関においても同様な内容を定めています。
② 説明責任は、「情報共有の原則」(第2章第5条)及び「市民の知る権利」(第3章第8条)の前提条件となるものです。
第21条 (市の職員の責務)
 市の職員は、市民の福祉の増進のために全力を挙げて職務を遂行しなければなりません。
【解説】
 市長その他の執行機関や市議会の職員は、法令等を遵守し全体の奉仕者として、市民福祉の増進のために全力を挙げて職務を遂行する責務があります。

第6章 市政運営

第22条 (基本構想等)
 市は、総合的で計画的な市政の運営を図るため、まちづくりの指針として市議会の議決を経て基本構想を定めます。
2 市は、前項に規定する基本構想の実現を図るための計画を定めます。
【解説】
① 市は、その事務を処理するに当たっては、議会の議決を経て、総合的で計画的な行政の運営を図るための基本構想を定め、これに即して行うようにしなければなりません。
② 基本構想は、まちづくりの指針として、都市像とそれを実現するための基本目標を定め、具体的な施策の方向性を示すものです。
 現在の第五次甲府市総合計画(2006〜2015年度の10年間の計画)は、この基本構想とその施策の基本区分の中で、各年度に取り組む事業を取りまとめた実施計画をもって構成しています。
第23条 (自主的な法令解釈と条例の制定)
 市は、市民生活や地域社会の課題に対応した政策を推進するため、地方自治の本旨に基づき、自主的に法令の解釈や条例の制定を行います。
【解説】
 地方分権の進展に伴い、市民生活や地域社会に基づいた政策課題を解決するため、自主的に法令を解釈するとともに条例を制定するなど、立法、法執行、争訟及び評価により政策活動を推進します。
第24条 (財政運営)
 市は、自立的な財政運営を行うことにより財政の健全性の確保に努めます。
2 市は、財政状況を市民にわかりやすく公表します。
【解説】
①  社会経済の各分野で構造改革が進み、地方分権の中で、市は財政的にも自立することが必要になっています。
② 市は、収入(歳入)と支出(歳出)のバランスの取れた持続性のある健全な財政運営に努めなければなりません。
 また、予算の執行に当たっては、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければなりません。
③ 財政状況の公表は、地方自治法第233条第6項の規定により、年1回公表するものとし、市民に分かりやすく公表することが大切です。
第25条 (市の組織)
 市は、社会経済情勢の変化や市民の要望に的確に対応するため、市民にわかりやすく、効率的で機能的な組織を編成します。
【解説】
 市は、常にその組織と運営の合理化に努めるとともに、その規模の適正化を図らなければなりません。
 また、編成する組織は、その時の政策課題などに対応するものであることや、市民にわかりやすいものでなければなりません。
第26条 (行政の手続)
 市は、公正で民主的な行政運営の推進を図り、もって市民の権利 利益を保護するため行政の手続を適正に行います。
【解説】
 甲府市が行う処分、行政指導及び届出に関する手続に関し、公正の確保と透明性の向上を図り、もって市民の権利利益を保護します。
第27条 (行政評価)
 市は、効果的で効率的な行政サービスの提供を目指すとともに、行政運営の透明性の向上を図るため、客観的な行政評価を実施し、その結果を公表します。
【解説】
 市は、事業を効率性や必要性等の視点から見直すシステムを確立し、限られた経営資源を効率的で効果的に活用する質の高い行政サービスを提供するとともに、第三者による外部評価を実施することによる行政運営の透明性の向上を図ります。
第28条 (国や他の自治体との関係)
 市は、国や山梨県と対等、協力の関係のもとに市政を運営しま す。
2 市は、国や他の自治体と積極的に連携を図り、共通する課題の解決に努 めます。
【解説】
 地方分権改革の中で、国、県、市町村等は、対等で協力する関係にあることが明確になりました。
 この関係に基づき、甲府市が国や山梨県や他の市町村と連携して、共通の課題の解決を図れるよう積極的に働きかけていきます。
第29条 (国際交流の推進)
 市は、相互理解の醸成等を目指して世界の国や地域の自治体等との交流を推進します。
【解説】
① 市は、世界の国や地域と、人、経済、文化などの交流を活発に進めていきます。
② この条文を基本として、「市民の市政に参画する権利と責務」(第3章第6条第1項)に「国籍等を問わず参画する権利があります。」を定め、文化や宗教の違いなどにより生じる問題解決に取り組むことも含めて、相互理解や醸成等を目指します。

第7章 市政への参画と協働

第30条 (市民との協働)
 市は、市民との協働のしくみを構築します。
【解説】
 市は、協働のパートナーとして、市民、コミュニティ団体、NPO、ボランティアの活動や、私的営利企業による社会貢献活動を取り込み、より大きな輪を設定するよう、協働の可能性や人と人とのつながりの拡大を図ります。
第31条 (市民の要望の取扱)
 市は、市民の市政に関する要望や苦情について誠実に対応します。
【解説】
 市は、市民の市政に関する要望や苦情をきちんと受け止め、速やかに検討し、その意見を取り入れるか取り入れないかについて返事をするなど誠実な対応をします。
第32条 (市民の意見提出制度)
 市は、重要な条例や計画の策定等に当たり、事前に案を公表し、広く市民に意見を求め、これを考慮します。
2 市は、市民から提出された意見とこれに対する市の考えを公表します。
【解説】
 甲府市では、パブリックコメントを実施するため、平成16年4月に「こうふ市民意見提出制度実施要綱」を施行しています。
 その中で、市民に義務を課したり権利を制約する条例を制定したり改廃するとき、また、市の施策に関する基本的な計画を決定したり変更するときに、市民の意見を聞いています。
第33条 (審議会委員等の公募)
 市は、市民の市政への参画の機会を広げ、公正で透明な行政を推進するため、審議会等の委員に公募の委員を加えるよう努めます。
【解説】
 甲府市では、平成11年9月に、「甲府市附属機関等の設置及び運営に関する要綱」を施行し、法律や条例により設置される審査会、審議会、調査会等の委員の一部を、公募により選任するよう努めています。
第34条 (直接請求、住民監査請求等)
 住民は、条例の制定や改廃などの直接請求や、住民監査請求等について地方自治法(昭和22年法律第67号)の規定に基づきこれを行うことができます。
【解説】
 地方自治法は、代表制民主主義の欠陥を補い、住民による恒常的な監視を可能とするために、国にはみられない直接民主主義的制度として、条例の制定や改廃、市議会の解散、市長や市議会議員等の解職、事務の監査請求などの直接請求や、住民監査請求、住民訴訟の制度を設けています。
第35条 (住民投票)
 市は、市政に関する重要事項について住民の意思を反映するため、住民投票を実施することができます。
2 市は、住民投票の結果を尊重しなければなりません。
3 市は、住民投票の実施に関し必要な事項を別に条例で定めます。
【解説】
① 住民投票制度は、政策過程に住民の提案が直接影響を与えることを志向する参加民主主義の制度の課題を考える重要なテーマの一つです。
② 地方自治法には、住民の権利として、議会の解散請求、議員や長の解職請求について住民投票制度があります。
 また、昨今の住民投票制度の動向として、合併特例法による市町村合併をめぐる直接請求を議会が否決した場合の対応をはじめ、常設型住民投票条例の制定による政策提言、条例の制定や改廃の直接請求などと連動させる試みも生まれてきています。
③ この条文では、住民自治の更なる発展を図る観点から、市政に関する重要事項について住民の意思を確認するために住民投票を実施できることを定めています。
④ 今後、住民投票を実施する条例を制定する際には、これらの状況を十分認識する中で、代表制民主制の意義を発揮させるとともに、日々の住民参加や住民による決定への参加のしくみを検討していく必要があります。
附則
1 この条例は、平成**年**月**日から施行します。
2 市は、この条例の施行後4年を超えない期間に、市民の意見を反映して条例の見直しを検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じます。
【解説】
 この条例の施行後4 年を超えない期間に、この条例が第1条に規定する目的を達成するのに適当であるか無いかを検討するとともに、必要と認めたときは、条例の改正その他適切な措置を講じます。