甲府市@山梨県のICT社会

こうふDO計画 基本計画書

実施手法

目 次
4.実施手法
 4.1 システム化対象業務範囲
  4.1.1 既存業務の整理と調達対象業務の検討
  4.1.2 新規サービスの検討
  4.1.3 システム化対象業務区分
  4.1.4 業務仕様の検討
 4.2 事業スキーム
  4.2.1 12年間の包括アウトソーシング
  4.2.2 サービス調達
  4.2.3 サービス品質の保証
  4.2.4 サービス区分・支払区分
  4.2.5 モニタリング・対価の減額
  4.2.6 リスク分担
 4.3 マネジメント
  4.3.1 マネジメントの考え方
  4.3.2 マネジメント体制の確立
  4.3.3 マネジメント手法・ノウハウの整備
 4.4 スケジュール
  4.4.1 DO計画の基本スケジュール
  4.4.2 平成18年度スケジュール(案)

4.実施手法

4.1 システム化対象業務範囲

4.1.1 既存業務の整理と調達対象業務の検討

「甲府市地域情報化計画」により、既存の平成20年12月リース終了に伴う汎用機関連システムの一括更新を、基本方針として策定している。従って、汎用機により処理を行っている業務、及び、汎用機とデータ連携を行っている業務について整理を行った。

また、包括アウトソーシングの観点から、リース等システム利用期間・時期を勘案し、本計画に包含することでコストメリット等が期待できる業務システムについても、対象業務として加えた。
更に、パッケージによる業務ノウハウの導入の観点から、複数社の業務パッケージについて調査を行い、現在システム化されていない業務であっても、パッケージ導入に伴いシステム化が容易な業務についても、対象とした。

これらの業務について、現在のシステム利用費について調査を行い、コスト削減効果測定の基礎資料として整備している。

4.1.2 新規サービスの検討

既存業務として実施しているものの他に、これから導入が期待される業務サービスについての検討を行い、統合GIS・自動交付機・コンビニ収納等のサービスについては、オプション対応事業(後述)として事業者の提案を受けることとする。

また、ITインフラに関連するものとして、将来の庁舎移転等を視野に入れ、サーバ設置場所を庁舎外に確保する。更に、庁内のPC利用等に関し職員のサポート負担が増大していることを踏まえ、ITヘルプデスクサービスについても本計画で整備する。

4.1.3 システム化対象業務区分

調達対象として整理した業務、及び、それに伴うシステムインフラ関連サービスを、システムや委託形態の特徴によって3つに分類した。詳細は別紙業務一覧表のとおり。

(1) 基幹業務系

住民情報、税務、国保・年金、介護・福祉、収滞納、等のシステムサービスを提供する。本市においては、これらのシステムは独立した基幹系ネットワーク上に配置される。

最新の業務パッケージから、業務効率化のノウハウを吸収すべく、なるべくパッケージに合わせて導入する。バージョンアップにより機能向上・法改正対応等の提供が行われることで、余分な追加コストや追加開発を省くことが可能である。業務や法改正への対応が十分行われている限り、事業期間中システムの入れ替えを特に必要としていない。パッケージの機能範囲や法制度改正対応等のバージョンアップ範囲が広く、アウトソーシングサービスの充実した事業者が期待される。

また、事業者のデータセンタを利用する提案も、オプション対応として受付け、運用負荷の軽減や災害時の対策、コスト削減効果等へ寄与することを期待している。

(2) 内部情報系

情報共有(グループウェア・文書管理)、人事給与、財務、等のシステムサービスを提供する。
本市においては、これらは情報系ネットワークに配置される。

最新の情報技術の導入により、職員事務の効率化を推進する。技術進歩に対応するため、システムの入れ替えや機能の拡充もある程度必要と想定される。複数の技術や製品の組み合わせを得意とする事業者が期待される。

内部情報系は、グループウェア・文書管理・財務会計等、Webベースのシステムでありながら、パフォーマンスが非常に要求されるシステムが多いため、性能の高いパッケージ(特に公共向けでなくとも良い)と、それらのチューニングが可能であることを期待している。

(3) インフラ系

データセンタ、ITヘルプデスク、等のシステムサービスを提供する。

通信回線やLAN の敷設等、ハードウェアの提供や、本市において利用しているPC及びプリンタのサポート及びQ&A 対応を行う。本市の施設に密着したサービスが必要であるため、地元企業や、甲府に拠点を置くことができる事業者が期待される。

なお、インフラ系については、基幹業務系、内部情報系それぞれの事業者を決定し、利用するデータセンタの面積等を確定した後、選定を行うものとする。

4.1.4 業務仕様の検討

(1) ヒアリングによる業務要件の抽出

業務一覧表に示される業務毎に、業務主管課に対し、端末台数・人員・運用時間・業務処理量等、現状の運用要件をヒアリングした。また、機能・帳票に求める標準機能案や、機能・帳票に関する要望を洗い出した。現行のシステムは汎用機中心であり、データ保持の方法や帳票出力等の処理方式も古いものであるので、現在の要望をそのまま仕様とするのではなく、各社の最新パッケージの機能や処理方法の考え方を調査した上で、機能・帳票要望を整理した。

(2) 機能仕様・帳票仕様の作成

整理した機能・帳票要望について、他団体の事例や各社の最新パッケージ機能の調査を踏まえ、機能仕様一覧・帳票機能一覧として整理したうえで、機能・帳票それぞれにつき、以下に示す分類に沿ってそれぞれの機能・帳票を精査した。幾つかの重要業務については、実際に数社の協力を仰ぎ、パッケージ機能の説明を受けた上で、機能・帳票仕様を整理している。

これらの仕様は、別途業務仕様書として事業者選定時に開示する。
事業者選定時には、応募事業者の提案するパッケージについて、業務毎にデモンストレーションを受け、実現手法や機能範囲について詳細に確認する。

ア 機能仕様区分
区分A:必須機能(業務遂行上固定的に必要不可欠な機能。法令等で定められているもの)
区分B:必須機能(業務遂行上必要ではあるが、実現手段は事業者の方針に合わせれるもの)
(例:データ登録・照会・検索・履歴・削除管理、リスト機能など)
区分C:支援機能(業務遂行上必須ではないが、業務効率化の為には有効なもの)

イ 帳票仕様区分
区分A:国・県等で帳票様式が定められており変更できないもの
区分B:甲府市で帳票様式が定められており、様式を合わせられるもの
区分C:EUC 機能等、データ項目の出力・編集機能で対応できるもの
(例:Excel 等で加工し帳票作成が可能なもの)

(3) 業務関連例規の精査

業務や帳票については、本市の例規その他によって規定されているものもあり、それらを変更すればパッケージに合わせられるものもあるため、機能・帳票に関連する規定についてあらかじめ調査しておき、パッケージを利用した業務改善の準備を整えておく必要がある。

また、同時に機能区分・帳票区分についても最終的な見直しを行い、業務仕様書の改定を行う。これらの作業は10月に予定している。

4.2 事業スキーム

4.2.1 12年間の包括アウトソーシング

PFI的な事業方式(延払方式、業績連動支払い、サービス品質保証、性能発注方式等)を用い、構築期間2年(平成19年度~平成20年度)及び運営管理期間10年(平成21年度~平成30年度)の、計12年間の包括契約とする。

運営管理期間(システム利用期間)を10年に設定した理由は以下の2点である。
1 つは、現場の負担を可能な限り減らすことである。システムの構築を2年、システム導入後の安定期間を1年と想定し、5年でシステムの更新を繰り返すとした場合、5年のうち実に3年は、現場に通常業務以外の負担を強いることとなり、「業務を効率化する」という目的と合致しなくなる。

業務を効率化し住民サービスを向上するために、住民サービス以外の事務負担を可能な限り削減することが、本計画の目的であり、システムを安定して利用する期間が長ければ長いほど、その効果が表れることとなる。

図4.2.1 システム更新の影響

もう1つは、システムそのものの保証期間を5年と設定している事業者が多いことである。本来、業務システムは、法制度改正等への変更対応と、ある程度のユーザビリティが確保されていれば、頻繁に更新する必要は無いため、なるべく長期に渡って利用したいものである。5年では現場の負担等を考慮すると短すぎるため、運営管理期間を10年としている。

また、5年後には競争等による市場環境の変化や技術革新により、システムの価格自体が低下する可能性があるために、5年単位でシステムを更新すべきという意見も見られるが、契約の残存期間に対するシステム新規更新の判断は以下の式で判断されるべきである。

[残存期間の現行システム運営費] > [新規システム構築費]+[新規システム運営費]少なくとも、現状におけるシステム構築費の高さを考慮すると、5年単位での更新は、業務システムの業務処理方法自体が画期的に変化し、業務が飛躍的に効率化される場合を除き、メリットは少ないと考える。

4.2.2 サービス調達

本計画における調達は、従来行われている物品調達や一部作業の委託という考え方ではなく、システムやSIサービス等の事業者が提供するサービスそのものを調達するという考え方を採用している。

つまり、システム(ハードウェア、ソフトウェア等)やアウトソーシング設備(サーバ設置場所、印刷場所等)は全て事業者の所有とし、本市はそれにより提供されるサービスを受け取る。従って、本市は受け取るサービスの仕様や要求水準を定義し、サービスのモニタリングを行うものとする。ハードウェアやソフトウェア等の技術要素は、サービスを実現するための手法と捉え、実現手法については事業者の責任において任意に決定し、あらかじめ定められたサービスの提供に必要な範囲においては、技術要素の提供・変更・更新等は事業者負担で行うものとする。本市は、これら構成要素についての情報提供を受け、確認のみ行う、という考え方である。

調達の対象がサービスそのものであるため、その対価については、サービスの提供を受け、モニタリング(検収)をした時点で決定・支払われることとなる。

本計画の事業契約において設定される契約価格は、本市が示すサービス仕様・業務仕様等の事業関連図書により規定した品質・機能や、その他他団体等の事例から一般的に必須と判断されるサービス内容を全て満たした場合の対価として設定している。従って、これらの品質・機能等が満たされなかった場合には、事業契約で規定する方法により減額を行い、支払対価が決定される。

図4.2.5 サービス対価の支払い

4.2.3 サービス品質の保証

サービス調達の事業においては、提供されるサービスの品質(性能、機能、サービス内容等)について、運営管理期間終了時まで、事業者がその保証を行うこととなる。サービスを構成する技術要素(製品)の保証内容・期間は特に考慮せず、事業者の裁量でサービスを達成するために必要な措置(提供・修理・交換等)を行う。

本事業において調達及び評価をする対象はシステムによって実現されるサービスと、事業者によりシステム等を構築・運営するためのサービスである。従って、サービスを構成する技術的な仕様・手法は事業者の提案に任せ、本市は、結果として受け取るべきサービスの水準に関する仕様を規定している。

他の事例等で締結されているSLAでは、性能や応答時間等、技術面での保証を求めるものが一般的であるが、本市においては、システムにより提供されるサービスや、事業者の構築・運営・情報提供等のSI関連サービスを主な対象として、サービス仕様書を定義している。

事業者は、サービス仕様を満たす範囲においては、事業者の責任と負担で必要な作業・機器の調達等を実施しなければならない。

これらのサービス仕様は、別途サービス仕様書として事業者選定時に開示する。

4.2.4 サービス区分・支払区分

サービス調達の事業においては、提供されたサービスの価値に応じた対価を支払うこととなる。個別のサービスが提供された時点から、そのサービスの対価を支払うこととする。
本事業は、以下の4 つの事業から構成される。

① 基本サービス

本計画の事業契約時における契約金額の対象範囲は、①基本サービス の事業に関するものだけであるが、その後甲府市と事業者との合意により、②~④の事業に関するものが追加される。

また、それぞれの事業区分ごとに、対価は初期費用とサービス費用に分けられる。
初期費用は、サービス提供完了時から当該事業の運営管理期間終了時まで、四半期ごとの延べ払いとし、サービス費用は、サービスの提供を確認(モニタリング:四半期ごと)するごとに支払う。

(1) 基本サービスの提供

提案募集時に示すサービス仕様・業務仕様等の事業関連図書に規定した業務を実施するために必要な、全てのシステム及びサービスを提供する事業。主なものとしては以下のとおり。

① 業務仕様を満たすシステム一式の構築及び運営

② サービス仕様・業務仕様を維持するために必要なシステム関連サービス(保守・更新・バージョンアップ等)

③ 法制度改正対応(ただし、(2)大規模法制度改正対応 に該当するものは除く)

業務仕様書に規定する業務区分単位で、機能数及び帳票数をポイント化し、業務区分ごとの機能ポイントを決定する。契約金額のうち、業務区分ごとの価格は、全体の機能ポイントのうち当該業務区分の占める機能ポイントの割合から算出する。

機能ポイントの算出方法については、本書によるもの以外に、事業者からの提案を受け本市が合意した方法でも可とする。

(2) 大規模法制度改正対応

法制度の新設あるいは抜本的な改正に伴い、通常のバージョンアップでは更新が実施できない程度の大幅な変更が必要であると合理的に判断される場合に限り、当該法制度改正対応のために必要なシステムの変更及びその後の運営サービスを提供する事業。

追加費用の算定は、原則として、以下の3 つの方法のうち最も費用縮減が図れる手法を選択し、更に同規模団体における事例を考慮して決定する。

① 追加される業務の機能ポイントを算出し、基本サービスにおける同等機能ポイントに対する価格を適用。

② 必要な作業等を詳細な工数分解により精査し、契約時に合意した一作業あたりの標準工数及び工数あたりの単価から価格を積算。

③ 当該法制度改正対応が他団体にも同等に適用される場合には、パッケージ改造費用を適用団体数で除した価格を適用。
なお、法制度の新設あるいは抜本的な改正に伴い、通常のバージョンアップでは更新が実施できない程度の大幅な変更、に関する具体的な判断基準や算定方法については、事業者からの提案を本市が判断し、決定する。

(3) 追加業務対応

基本サービス以外に、契約締結後、本市からの要望でシステムの変更・追加やコンサルティングサービス等を提供する事業。

追加費用の算定は、上記(2)大規模法制度改正対応の①及び②の方法のうち最も費用縮減が図れる手法を選択し、更に同規模団体における事例を考慮して決定する。

(4) オプション対応

基本サービス以外に事業者からの提案を受け、システムの変更・追加やコンサルティングサービス等を提供する事業。

追加費用の算定は、上記(2) 大規模法制度改正対応の①及び②の方法のうち最も費用縮減が図れる手法を選択し、更に同規模団体における事例を考慮して決定する。

(5) 対価の見直し

本市は、以下の事情に基づき必要な場合、事業者と協議の上、平成22年度、平成25年度及び平成28年度の各年度(変更予定年度)の開始時点から、本事業の内容又は条件を見直し、サービス費用の一部を見直すことができる。これらの協議は、変更予定前年度に行う。

① 技術革新等によりサービスの提供コストが著しく削減できると判断される場合

② 他団体の事例・動向等を調査し市場価格との乖離が大きいと判断される場合

③ 法制度の変更等により予定していた業務が変更になる等、本事業の内容又は範囲の変更につき合理的な理由が生じたと認める場合

④ その他、社会情勢等を考慮し、事業に関する条件を変更すべきと合理的に判断される場合また、追加費用の対象事業(4.2.4(2)~(4)の場合)についても、変更予定年度以降の3年間に実施される内容・費用について、変更予定前年度に協議・合意を行い、サービス費用もしくは初期費用の追加・変更を行うものとする。

図4.2.4 追加費用及び対価の見直しの考え方

4.2.5 モニタリング・対価の減額

提供されたサービスを定期的にモニタリングし、その品質を確認する。その際、品質の低下が見られる場合には、支払う対価も減額されることとなる。

サービスの品質は、性能・作業品質・スケジュール等について評価するものとし、特に市民や職員に影響のあるものについては、重く評価する。モニタリング時に、あらかじめ合意されたサービス仕様を下回った場合にはペナルティポイントを付与し、支払い時にそれまでのペナルティポイントを集計し、対価を減額する。

サービスの改善活動や、システムの改良・コンサルティング等付加価値を高める活動等が行われた場合、もしくは、法制度改正対応や追加業務対応等において費用縮減が図られた場合には、その価値を勘案し、評価ポイントを付与する。評価ポイントは、ペナルティポイントとの相殺を可能とすることで、事業者の自主的な改善活動を期待することとしている。

(1) モニタリングの実施

事業者は、セルフモニタリング実施計画書を策定し、契約期間中、サービス仕様及び業務仕様を満たすサービスが提供できているかどうかを毎月セルフモニタリングし、翌月にその結果を報告す る。

本市は、サービスの提供結果とセルフモニタリングの報告を検査し、システム機能の状況やサービスの品質を確認(モニタリング)し、結果を四半期ごとに集計・確定する。

(2) サービスの改善

モニタリングの結果、サービス仕様及び業務仕様が達成されていない場合、本市は事業者に対して改善勧告を行う。また、サービス仕様及び業務仕様が達成されないおそれが非常に高いと判断される場合には、改善注意を行う。

事業者は、本市からの改善勧告を受けた場合、直ちに改善計画書を作成し、本市に提出し、承認を得なければならない。

改善計画書に従い、本市と事業者は、相互に協力し状況の改善・回復に努める。その際、事態の発生に至った責任の所在を明らかにし、本市側の責めによる場合は協議のうえ、事業者に生じた費用を甲府市が負担する。その他の場合にあっては、改善・回復に要した費用は原則として事業者が費用を負担する。

(3) ペナルティポイントの付与

モニタリングの結果、サービスの品質に問題が確認された場合、本市は事業者の意見を聴取する 等十分な検討を行った上で、対象事象ごとにペナルティポイントを付与することができる。

(4) 評価ポイントの対象

事業者に対し、本市が示すサービス仕様・業務仕様等の事業関連図書により規定した品質・機能を全て満たすことを求めているが、非常に高い品質のサービスが提供された場合や、より質の高いサービスの提供に向け改善活動を行った場合等については、本市は事業者の取り組みを評価し、一定の評価ポイントを付与することができる。

評価ポイントを付与する主な例として以下のものが挙げられる。

① システムの障害が全く無い等、システムの稼動結果が非常に良好であった場合

② 業務仕様を超え、市民や職員の便益が向上する機能が新たに提供された場合

③ システムの安定・品質向上に向け、事業者が自主的に改善措置を行った場合

④ 利用者の声を調査し、ユーザビリティの改善を行った場合

⑤ 追加費用の対象事業(4.2.4(2)~(4)の場合)が行われ、見積り時よりも費用縮減が図られた場合

(5) 評価ポイントの付与

評価ポイントの対象となる取り組みが行われた場合、事業者から評価ポイントの付与を申請し、本市が申請内容を評価し、付与するポイントを決定する。

(6) 減額の決定

四半期ごとの支払時期が到来した時点で、本市は、その時点でのペナルティポイントと評価ポイントを集計し、当該時点の支払額から減額することができる。

4.2.6 リスク分担

本計画におけるリスク分担(リスクの顕在化・問題の発生時における作業・費用負担)は、発生した事象に対し、事業者側と本市とどちらに責任があるのかを明らかにし、その責任割合に応じてリスクの負担をする、という考え方を採っている。

原則として、合意された品質を達成する範囲までのサービスの提供・維持に係るリスクは事業者が負うこと(本計画の当初契約における実施義務範囲内)となるが、サービスに影響を与える外部要因の性質によって、本市がリスクを一部負担する場合もある。

リスク分担の基本的な考え方を以下に示す。

(1) 機能追加等、サービス仕様の変更に関するもの

本計画において当初示すサービス仕様・業務仕様や、事業者からの提案内容・契約交渉における合意内容を超え、新たに本市から提示するサービス仕様の追加・変更(追加業務対応に相当)を行った場合は本市が原則負担する。

ただし、事業者側の事由等により変更を行った場合(ソフトウェアを事業者都合で変更したために付属機能の追加対応が必要な場合、構成変更によりシステムに改造が必要な場合、等)、もしくは現状のサービスを維持するために合理的に必要な変更を行った場合(ソフトウェアのバージョンアップを行った場合、性能不足のために設計変更を行った場合、等)については、事業者が負担する。

(2) システムの構成等、技術仕様に関するもの

システムの構成・変更・更新・撤去を含め、原則として全て事業者負担とする。
システムを構成している製品の販売価格体系の変更・サポート体系の変更があった場合や、製品のサポート停止のために代替製品に入れ替える場合、障害や性能不足により製品を入れ替える場合 も事業者負担とする。

ただし、本市の事由によるサービス仕様の変更により発生するものに関しては本市の負担とする。

(3) 法制度改正に関するもの

原則として事業者負担とする。法制度改正対応は、パッケージのバージョンアップとして提供され、本市向けの独自カスタマイズが少ないものが望ましい。

ただし、法制度の新設・抜本改正であり、かつシステムの設計・構造に大幅な変更が必要と合理的に判断される場合については、4.2.4(2)大規模法制度改正対応の手続きに従い、事業者との協議により本市が一部負担する。

(4) 庁舎移転・組織変更等、本市に関するもの

原則として本市が負担する。

(5) 拠点変更・組織変更等、事業者に関するもの

原則として事業者が負担する。
また、事業者自身や構成企業、製品供給元の破綻時のサービス継続策・代替策の立案や、破綻防止策の立案をあらかじめ行っておくこと。

(6) 天災等、自然・地理的要因に関するもの

原則として事業者と本市の協議により、共同で負担する。
ただし、本計画についてあらかじめ事業者側で事業継続計画を策定し、その計画によって合意された対策範囲であるにもかかわらず、想定どおりに稼動しなかった場合(耐震設計の想定内であるにもかかわらず機器が損壊した場合、予備電源が稼動しなかった場合、予備通信回線が確保できなかった場合、予定通りデータが復元できない場合、等)は、事業者の負担とする。

4.3 マネジメント

4.3.1 マネジメントの考え方

本計画の目的を達成するためには、本市が主体的に事業者をマネジメントし、常に緊張感を持ったパートナーシップを維持するよう、事業者等の関係者をコントロールしてゆくことが必要とされてい る。

そのため、事業者の選定・契約交渉時だけでなく、定期的なモニタリングや3年毎の支払い対価見直し交渉等の機会を設け、提供したサービスを評価しサービスの価値に見合った対価を決定するプロセスを、事業期間中に継続的に実施することで、事業者と常に適切な関係を維持するよう配慮している。事業者側の作業進捗等のプロジェクトマネジメントのチェック、価格積算の精査、問題点の指摘・リスクの発見、改善提案を継続して実施し、モニタリングによって、事業者のモチベーションを維持しなければならない。これらの作業を通して、適切な品質・適切な価格のサービスの実現に向け、継続的に事業者と議論し認識を共有し続けることが必要である。

プロジェクトのマネジメントにおいて最も重要なのはコミュニケーションである。事業者とのコミュニケーションの中から、早期にリスクを発見し、問題の本質・原因を見極めてゆかなければならない。マネジメントやコミュニケーションを事業者に一任せず、本市において主体的に実施することが、本計画の成功に大きく影響する。

マネジメントの実施においては、①本市側のマネジメント体制の確立、②事業者を効率的にマネジメントするための手法・ノウハウの整備、の2点が重要である。

4.3.2 マネジメント体制の確立

IT投資の最適化のため、計画・予算段階での精査を中心に実施されている例が他団体の事例等で見られるが、本市においては、むしろ実行・評価段階におけるマネジメントをまず実施すべきと考える。

計画・予算段階において予定していた効果を、予定していた予算で実施するためには、プロジェクトのスキームや仕様をどのように具体化し、どのように事業者を選定・契約し、プロジェクトマネジメントを適切に実施し、その成果をモニタリング・評価・監査しなければならない。これら実行・評価段階での確実なマネジメントや、実施結果の効果測定の結果がノウハウとして蓄積されることで、初めて計画・予算段階における適切な判断が可能となると考えられる。

本市においては、これまで情報システム関連の整備計画や予算は業務主管課毎にまとめられる場合が多く、そのため実行・評価段階のノウハウが蓄積され難いという問題があった。しかし、ITプロジェクトのマネジメントを効果的に実施するためには、ITプロジェクトに関する意思決定、及びマネジメントを全庁的に実施する必要がある。

そのため、全庁的な意思決定のため、CIOを設置し、それを支援しマネジメントを全庁的に管理する組織として、PMOを設置することとした。

(1) CIOの設置

中央省庁や先進自治体の例にみられるように、ITプロジェクトに関する意思決定を統一的に実施するため、CIOを設置する。CIOは、計画・予算・実施・評価の各フェーズにおいて、全体最適の視点から、各部門間を調整しITプロジェクト全体の判断を行う。他の事例では、CIOを補佐するために、CIO補佐官を民間等から招聘する例が多く見られるが、本市においてはこれをPMOにより実施する。

(2) PMOの設置

組織のIT関連施策を最適化するためには、CIOを設置するだけでは不足であり、IT関連施策の実施を全庁的に管理・監督する専門組織が必要との認識が高まっている。中央省庁においても、内閣官房主導で、府省ごとにPMOを設置する動きが始まっている。

こういった背景を踏まえ、これら事業者のマネジメントを実施する専門組織として、「こうふPMO(仮)」を設置する。こうふPMOにおいては、以下の5 点を主な役割とする。

① CIOの補佐・支援

② ITプロジェクトのマネジメント

③ IT調達における事業者選定

④ ITプロジェクトのモニタリング・監査

⑤ ITマネジメントのノウハウ整備・人材育成

こうふPMOは、実行・評価段階における中心組織として、事業者との交渉やマネジメント、本市内部の調整等を行う。本計画をはじめ今後予定されるサービス調達において、プロジェクト計画の立案、仕様の策定、事業者の選定、契約、本市側のプロジェクトマネジメント、モニタリング・監査を行い、それらに関するノウハウの整備を行う。

また、事業者には、マネジメント・モニタリング・効果測定のために必要なデータの提供を義務付けるものとする。

図4.3.2 CIOとPMOの位置付け

4.3.3 マネジメント手法・ノウハウの整備

サービスを提供するプロジェクトのマネジメントも、事業者が提供するサービスの一部であるが、その事業者のプロジェクト活動について、本市側においてマネジメント・コントロールを行ってゆくためには、高度な経験とノウハウが必要であり、これらのノウハウを整備・継承し、マネジメントを実施する専門性の高い職員を育成してゆかなければならない。

ITマネジメントに用いる各種ツールを整備し、適用法を文書化するだけではなく、各種マネジメントを実施する意味・意図を整理するとともに、実施における経験や、失敗を検証し見直すプロセス等も文書として整備することで、本市に実効性のあるノウハウを蓄積しなければならない。

また、プロジェクトの各局面においてOJTを実施することで、これらのツール・ノウハウの継承とブラッシュアップを図り、“技術の専門家”ではなく、“マネジメントの専門家”を育成してゆかなければならない。

(1) プロジェクトマネジメント手法の整備

プロジェクト実施時においては、プロジェクト計画書・システム仕様書・テスト計画書・運用計画書等の計画・設計書や、実績報告書・監査報告書等の報告書等、様々なコミュニケーションが文書によって交わされる。これらは、事業者においてサービスの結果として報告されるものであり、そのため、これら計画書や報告書、及びそれらに用いられる管理手法については、事業者に一任するのではなく、本市としても管理基準やノウハウを整備し、事業者の本市とのコミュニケーションに利用してもらわなければならない。

そのため、これら計画書や報告書、及びそれらに用いられる管理手法については、事業者に一任するのではなく、本市としても管理基準やノウハウを整備し、事業者の本市とのコミュニケーションに利用してもらわなければならない。

進捗管理、問題・リスク管理、変更管理等のマネジメントに利用する手法やフォーマットを整備し、なぜ問題なのか・どのように対処すべきか、といった問題解決の事例やノウハウを蓄積する。

また、問題の発生や障害等、計画書との相違が発生してしまった、いわゆる失敗の事例については、これらの原因についても分析し、その後のマネジメントの教訓とする。

これらの手法を整備した上で、実績報告時等の事業者のとのコミュニケーションの機会においては、本市側から積極的にリスクの兆候を指摘し、問題解決の方法を提案してゆく。

(2) ノウハウの蓄積と継承

マネジメント手法の整備を行ったとしても、単なる文書フォーマットをまとめただけでは、「何故そうしなければならないのか」といったマネジメントの意義・意味に関するノウハウが失われてしまう。

重要なのは手順や文書ではなく、これらの意義・意味を蓄積することであり、これにはマネジメント手法に対し、意義・意味を記載し、更に事例によって詳解した解説文書を作成し続けることで対応する。

また、ノウハウの継承の際には、新しい職員は本市マネジメント手法の研修を受けると共に、経験のある職員や支援コンサルタントの下で、新しい職員が実プロジェクトのOJTを受け、その成果を解説書類の改訂という形で残してゆくこととする。

これらを継続して実施することで、マネジメントの方法論ではなく、具体的な方法の蓄積・整備を図るものとする。

4.4 スケジュール

4.4.1 DO計画の基本スケジュール

(1) 仕様策定・選定期間 平成18年度
計画の策定、仕様の決定、事業者の選定、契約交渉等
(2) 構築期間 平成19年度~平成20年度
パッケージ適用協議、収滞納システム稼動(既存収納システムと連携)、システムの段階稼動(提案による)、既存システムのデータ移行、既存システムの廃棄(提案により平成21年度の場合もある)
(3) 運営管理期間 平成21年度~平成30年度
システムの利用、法制度改正対応、追加機能対応、オプション対応、システムの維持・更新等次期システムへのデータ移行(最終年度)
図4.4.1 全体スケジュール

4.4.2 平成18年度スケジュール(案)

(1) DO計画
 7 月 DO計画の公表
 8 月 パブリックコメントの募集、業務検討(業務仕様作成)
10 月 事業公告、業務検討(例規等見直し、仕様の修正)
12 月 業務検討(デモンストレーション審査)
 2 月 契約交渉、事前協議、業務検討(機能検討)
 3 月 契約
(2) 基幹業務系・内部情報系
10 月 仕様書等の資料開示及びQ&A、参加表明の受付
11 月 資料の修正及びQ&A、資格審査
12 月 提案書の受付、提案書の審査・デモンストレーション審査
 1 月 提案プレゼンテーション、優先交渉権者の決定
 2 月 契約交渉、事前協議
 3 月 契約
(3) インフラ系
1 月 仕様書等の資料開示及びQ&A、参加表明の受付
2 月 資料の修正及びQ&A、資格審査、提案書の受付、提案書の審査
3 月 優先交渉権者の決定、契約交渉、事前協議、契約
図4.4.2 平成18年度スケジュール
 

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