甲府市@山梨県のICT社会

後戻りできない地デジ移行


2008年10月27日(月)14時00分〜15時00分 地上アナログテレビ放送終了の1000日前イベント、会場・大阪千日前 YES広場

2008年10月1日、「総務省テレビ受信者支援センター」の開所式が全国11ヵ所で開催されました、これ以外の山梨県などは2009年度開設とのこと
・・この件に関連して2008年10月27日の山梨日日新聞は、『山梨県内のセンターは当初、来年4月ごろ開設する予定だったが、2カ月早めて2月前後となる見通し』と報じました。

2008年8月21日の日経ビジネス オンラインに、読者コメントを基に 「地上デジタル放送の明日」を考える という記事が出ていました。2008年7月24日発表の地上デジタル放送推進総合対策(総務省)を受けて7月31日、元の記事に寄せられた読者コメント(81件)を編集して紹介している記事、筆者は谷島宣之さんです。

地デジ移行キャンペーン

地デジ移行の理由は電波資源の有効活用ということですが、国家、業界、国民が膨大な経費をかけて空けた後の使い道は既に計画済みだと思っています。

しかし、当初はテレビや映像に関係するハード業界の国際競争力維持、保護、あるいは活性化する為に地デジ全面移行が考え出された、電波の帯域を空けること、その活用という理由は後から付けられたのかと思える記事があります。「デジタル(UHF帯)に完全移行したら、VHF帯のアナログ放送を止めて移動体通信などに使えるので、電波の有効利用という国民的な利益がある」のだという話に至る経緯が池田信夫さんのページに書かれていました。「池田信夫 blog」は私の巡回先です。日経BPに池田さんが書かれた記事は谷島さんの7月の記事からリンクされています。

ICPFのシンポジウムに登壇した鬼木甫大阪学院大学経済学部教授は「使えるテレビを捨てるという点では、国民のすべてが国策の犠牲になるわけで、特定の人だけに補償するのは間違っている」「デジタル移行によって空く電波をオークションにかけ、得られた資金を全国民に分配すべき」と発言した。』と谷島さんの記事に書かれています。「補償」というのは特定の層にチューナーを無償配布する施策が検討されている事を指します。

池田信夫さんの「地デジの嘘」(2008-04-29)というブログ記事から知ったのですが、「アナログ停波の時期は妥当か――経済学の視点で検証する(上)」という鬼木 甫(おにき はじめ 大阪学院大学経済学部教授/大阪大学名誉教授)さんの記事、2008年4月7日があります。

議論の結果をまとめておこう。本稿の試算は、「効率性」の点からすれば2011年7月の停波がおおむね正当化できることを示している。同時点で新しい電波を手に入れ、無線インターネットをはじめとする新サービスを開始することは、アナログ受信機を生かして使うためのデジタルチューナー生産費用を考えても十分にお釣りが来るのである。言いかえれば同時点での停波は、情報通信部門から生産される付加価値(GDPの構成要素)を最大化し、これによって日本経済の成長に貢献できる。しかしながら他方で、2011年7月の停波は、国民の異なる階層の所得に数千億〜兆円単位に及ぶプラスあるいはマイナスの影響を及ぼす。その補正を怠ったままで停波に進むと、当然ながら直前になって抗議、停波延期要求、補償要求などが続出し、社会的混乱を生ずる可能性が大きい。つまり2011年7月という停波時点の選択について、効率性に基く結論と公平性に基く結論が一致しない。
この点を考えた上でどのような政策オプションがあるかについて、そして諸外国とりわけ米国のテレビデジタル化について、次回は考えてみたい。

その次回というのが4月15日の記事「アナログ停波の時期は妥当か――経済学の視点で検証する(下)」になります。この鬼木さんの記事についてブログに書こうと思って残していたのですが、今回のテーマにもぴったりなのでリンクしておきます。

山梨県立美術館はミレー、バルビゾン派の絵画に特化した山梨として特長ある美術館の計画が先にあり、それに合わせた建物ができたのだと思います。山梨県立博物館も甲斐の歴史についての豊富な資源を保存、研究し鑑賞に供する計画が先にあって建物の設計施工があったものだと思います。

家電大型店やテレビ局が盛り上がっている地デジ移行は、私にはハードを売りまくるだけのお祭りに見えます。映像情報というソフトの価値を活かすのは地デジだけができるのではありません。

現在65歳以上高齢者の方はテレビ世代でしょうが、1995年のインターネット元年に25歳だった方も2035年に65歳、その時を待つまでもなくテレビからインターネットに移行中だと私は思っています。海外のニュース動画を見るのはテレビではなくインターネットからです。

テレビを情報配信の道具と考えるか個人的な娯楽の道具と考えるかで、税金を投入すべきかどうかが決まります。映画館の新設、改築、維持費に税金を投入するのは、それが街づくりと表裏一体、市民の福利向上だと理解された時でしょう。
山梨県上野原市の公費投入による情報通信基盤整備事業はインターネットが情報交換の道具として不可欠な時代に入っていることを認識した結果であり、CATV地デジ対応が主なのではないと理解しています。 山梨県情報ハイウェイも同じと思います。それぞれの進め方には疑問がありますが。
しかし1995年以前のテレビのような情報配信ツールとしての重みが今のテレビにあるかどうか疑問です。私には過去の栄光と利権維持にしがみついているだけの業界にしか思えません。ソフトの勝負でいくならインターネット配信して何が不都合なのでしょう。私の契約しているOCNもホームページを見れば分かるように有料動画配信を行なっています、私は見たいものが無いから今は使わないだけです。

視聴者、国民不在で業界と官僚の思惑から一方的に決められてきたような全面地デジ移行は後期高齢者医療制度が実施後に問題化したように、その時、2011年7月24日になって大騒ぎになるのかも知れません。でもその時には後戻りできません。いまから対策を講じておく必要があるでしょうが、その対策は誰の仕事でしょうか。私にはわかりません。甲府市内で生じる問題を甲府市行政に押しつけるのは酷です。地方行政がテレビ放送業界を相手に損害賠償請求でも起せるものかどうか私にはわかりませんが、池田さんの「地上デジタル放送FAQ」に書かれていることはひど過ぎます。

地デジ移行後にテレビを見なくなる人々も増えてきてCM収入が減り業界が困ることは関係無いとしても、この国策事業のために多額の税金が既に使われてしまった、これからも使われるという状況だけはなんとかできないものかと思います。
同じように巨額の国費を費やしていると思える2010年度へ向けたブロードバンド・ゼロ地域の解消との連携が何故できないのか、その点がどうしても理解できずにいます。デジタルアーカイブこそ、それがリアルタイムであれ過去データであれ、放送と通信の融合が求められていると考えています。

片道燃料で走り出してしまって後戻りできない特攻作戦なら、もてる武器を全て使って有効な戦果を上げるべきでしょう。有線と無線、電波とインターネット、日本の技術は誰かが利権意識で囲い込まない限り世界に冠たるものだと私は思っています。大艦巨砲で勝てると思って航空機に負けた歴史から学ばねばなりません。
日経BPの記事から過日調べて放置したままの地デジ問題が再燃した私ですが、とにかくテレビの買い替えなどを考えずに冷ややかに様子を見ていた方がよいと改めて思いました。

 

ICT甲府のブログに2008.08.22 後戻りできない地デジ移行として掲載したものを転載しています。

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