北富士演習場

富士保全法と北富士、東富士演習場

広報ふじ昭和48年 2013年2月22日の 読売新聞山梨版が、「新富士保全法」議論再び との記事を掲載していました。
3月末で期限が切れる北富士演習場(富士吉田市、山中湖村)の第8次使用協定の更改へ向け、地元側から防衛省に要望書が提出された。掲げられたのは、「新富士保全法(仮称)」の制定。40年以上前から地元の悲願だった法律が、富士山の世界文化遺産登録が推進される中、再び議論されることになった。
この記事は歴史的経過も説明している優れた内容でしたので、検索も絞りやすくてありがたかったです。

昭和48(1973)年2月の静岡県富士市広報のデジタルアーカイブがヒットして、引用したのはアップロードされているPDFファイル冒頭記事の画像です。

「富士保全法」とは「富士地域環境保全整備特別措置法案」(内閣提出 第115号)のことで、第71回国会 公害対策並びに環境保全特別委員会で、昭和48(1973)年5月11日審議の議事録 も確認できました。当時の三木武夫環境庁長官の発言を引用しておきます。(文中の漢数字はアラビア数字に書き換えました)

○三木国務大臣 ただいま議題となりました富士地域環境保全整備特別措置法案について、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。

 富士山は、わが国の最高峰として、その雄大典雅な山容の美しさは古くから国民にとうとばれ、あるいは、詩歌、絵画等文芸上の題材となり、あるいは、登山、逍遥等の適地として利用されるなど、広く親しまれてきた名山でありまして、わが国の自然の象徴であるとともに、国際的にも希少なすぐれた景観を持つ山岳として高く評価されているものであります。

 このようなことから、富士山の地域は、早くから国立公園に指定され、自然環境を保護しつつ国民の健全な利用に供することとされてきたのであります。

 しかしながら、この富士山及びその山ろく地域は、首都から約100キロという近距離に位置し、近来、東名、中央の両高速道路をはじめとする各種の交通運輸機関が整備されたため、この地域を訪れる者の数は急激に増加し、別荘、ゴルフ場等の開発も進行し、自然環境の保護かつ適正な利用環境の確保、あるいはこれらに必要な施設の整備のあり方等について多くの問題が生じつつあるのであります。

 このような現下の状況を考えますと、国民的資産としてのこの地域の自然環境を十分に保護して、長く後代の国民に伝えるためには、国立公園外の山ろく一帯の地域も含め、より広域にわたって乱開発を防止し、山ろく一帯の環境をこの地域にふさわしい形で計画的に整備することが、きわめて緊急の課題であると考えるのであります。

 このような観点に立って、今回、自然公園法等と相まって、富士山及びその周辺地域の自然環境を保護し、それにふさわしい利用環境を確保するための特別の措置を講ずる目的をもって、この法律案を提案いたした次第であります。

 以下、この法律案の内容を御説明申し上げます。

 まず第一に、この法律案において対象とする富士地域とは、富士山及びその周辺地域のうち、その自然環境の保護及びその自然環境にふさわしい利用環境の確保並びにこれらに必要な施設の整備を富士山を中心として一体的かつ計画的に推進する必要がある地域であり、具体的には、今後十分な調査を行なった上で決定いたしたいと考えておりますが、現在のところ、おおむね富士山頂から半径20キロの圏内について政令で指定を行なう考えであります。

 第二に、富士地域における自然環境の保護及びその自然環境にふさわしい利用環境の確保並びにこれらに必要な施設の整備をはかるため、富士地域保護利用整備計画を策定し、その実施を推進することにいたしております。

 第三に、富士地域における自然環境の保護または利用環境の確保のための規制につきましては、国立公園の区域における自然公園法に基づく規制の適正な運用と相まって、国立公園の区域外についても、建築物等の設置に関し所要の規制を行なう等、富士地域の自然環境の保護の徹底を期するとともに、利用規制地域として徒歩利用地域等の四種類の利用地域を指定し、これら利用地域においては、その指定の目的を達成するために支障を及ぼす行為については、これを規制し、良好な利用環境の確保をはかることにいたしております。

 第四に、富士地域保護利用整備計画に基づく保護利用整備事業につきましては、毎年度定められる実施計画に従い、国、地方公共団体その他の者が実施することにいたしておりますが、これら事業にかわる経費につきましては、国が財政上の特別措置を講ずることにいたしております。

 このほか、富士地域の自然環境の保護等に関する重要事項について調査審議するため、学識経験者等からなる富士地域保護利用整備審議会を設置する規定等を設けております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

第71回(特別会)は、昭和47(1972)年12月22日~昭和48(1973)年9月27日の280日間だったと記録されています。 上記の5月11日衆議院委員会で三木さんが富士保全法に続けて説明した「自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案」(内閣提出、衆議院送付)は、参議院で昭和48年7月13日公害対策及び環境保全特別委員会の議題になり原案どおり可決されています。
第71国会参議院委員会の議事録を確認しましたが富士保全法案の審議記録は見つかりませんでした。

しかし、第71国会衆議院ではこの法案の一部修正が行なわれ、継続審査となったようです。
第72国会 昭和49(1974)年5月31日参議院公害対策及び環境保全特別委員会で「富士地域環境保全整備特別措置法案(第71回国会内閣提出、第72回国会衆議院送付)」として議題となりました。
三木武夫さんから衆議院委員会と同様な提案理由及び内容説明があり、『衆議院議員(林義郎君) ただいま議題となりました内閣提出の富士地域環境保全整備特別措置法案に対する衆議院の修正の趣旨について御説明申し上げます。  本案は、第71回国会から継続審査となっている法案でありますので、本法案で引用している自然公園法及び自然環境保全法が第71回国会において一部改正されたことに伴う字句の整理、保護利用整備事業に要する経費についての国の負担金または補助金の割合の特例に関する規定を昭和50(1975)年度から適用するための字句の整理等、所要の修正を行ないました。』と記録されています。(数字変更)
『委員長(鶴園哲夫君) 以上で趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明は終わりました。』でこの日は別件が審議されています。

「富士保全法案」は第71国会に閣法として提出され、衆議院で1973年5月に委員会審議、修正されて次の国会に継続となった。
第72回(常会) は昭和48年12月1日~昭和49年6月3日の185日間で、その会期末5月31日に最後の委員会にかけられて、説明がされて終ったのでしょう。
その後の経緯はわかりませんが、読売新聞の記事によれば第73国会には継続されず会期末で廃案となったのです。継続しなかった理由はわかりません。(委員会、本会議の議事録を綿密に調べたわけではありません)

富士保全法と東富士、北富士演習場の関連は私にはわかりませんが、
◇ 御殿場市サイトで、東富士演習場の歴史が確認できました。
◇ 環境省では、富士山における環境保全の取り組み
◇ 山梨県では、北富士演習場対策課があります。
◇ 記事に名前が出るのが、その中に置かれている北富士演習場対策協議会(演対協)
その他、北富士演習場使用協定対策地元協議会、山中湖村旧三村入会組合連合会などは検索すれば何らかの記事はありました。

1973年~74年、コンピュータは「電子計算機」の時代ですから仕方ないですが、「新富士保全法」については国法の成立過程を全国民が見ていられる時代に審議される事になります。「新富士保全法」 については廃案となった法案と比べられる形で原案を見てみたいと思っています
なにしろ環境利権・放射能バラマキの環境省が原案を策定するのでしょうから、心して注目したいと思います。
「新富士保全法」 は山梨県だけの問題ではありませんから、静岡県などとの連携は当然行なわれると思います。ネット発信も活発に行なわれる事を期待したいと思います。
1974年に「富士保全法案」が廃案となってしまったのが、日米地位協定 には関係なかったなら幸いです。

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◇ 2012.12.12 哀れ環境省利権の真実@福島県鮫川村
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