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放射線安全規制値
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放射線の安全規制値

日本放射線影響学会 と 国際放射線防護委員会

このページは「放射線物質汚染対処特措法」により2011年12月19日に環境省が発表した除染のしきい値 0.23 μSv/h について検討するための資料として作成しました。検討は別ページです。
福島原子力発電所の事故に伴う放射線の人体影響に関する質問と解説 (Q&A) 平成23年3月18日開設

日本放射線影響学会-Q25 放射線の安全規制値はどのようにして決められているのですか?

放射線安全規制値は、過去50年以上にわたって科学者がおこなった原爆被ばく者などの疫学調査および放射線の生体影響研究で得られた膨大な研究成果を、国連(UN)および国際放射線防護委員会(ICRP)などの専門家が収集して解析し、定期的(およそ10年ごと)におこなわれる放射線の人体への影響に関する勧告をもとに導きだされます。

この勧告を受けて国際原子力機関(IAEA)等が、さらに検討して、安全のための規制値を国際的に提言します。その提言を受けて各国が自国の判断で規制値を定め法制化しています。

我が国もこの勧告を受入れ安全規制値を作成しています。その安全規制値は、一般人に対して年間 1,000μSv (= 1mSv)、放射線業務従事者に対して年間 2万μSv (= 20mSv) とされています。

放射線の影響は、ある一定の線量以上を浴びたときにだけに現れる「確定的影響」と、どんなに低い線量の被ばくであっても被ばく線量に比例して影響が現れると仮定されている「確率的影響」に分けられています。

確定的影響が 10万μSv (= 100mSv) 以下では現れるという報告はありません。一方、発がんや遺伝的影響は確率的影響といわれ「どんなに低い線量の被ばくであっても被ばく線量に比例して影響が現れる」と仮定されています。
しかし、実際は、疫学研究でも実験研究でも、10万μSv (= 100mSv) 以下の被ばくで、統計的に有意な影響が観察されたことはありません。
したがって、この 10万μSv (= 100mSv) が人に健康影響を及ぼさない最少の放射線量として安全の目安とされています。

この規制値が疫学調査研究や実験の結果で人体に影響が現れない 10万μSv (= 100mSv) より小さい値なのは、より一層安全側にたって規制するという厳しい考えを採用しているからです。

一般人に対する規制値である年間 1,000μSv (= 1mSv) は自然放射線量とほぼ同じレベルです。
自然放射線とは、宇宙線、大地、空気、および食品や水に由来する放射線で、その量は、地域や標高などによって異なりますが、日本での平均はおよそ 1,400μSv (= 1.4mSv) です。標高が高い地域では宇宙線により、花崗岩が多い地域では大地からの放射線により自然放射線量が高くなります。

したがって、一般人に対する規制値である年間 1,000μSv (= 1mSv) というのは、「放射線事業者に対して放射線業務を行なうにあたっては、一般人の生活地域に対して放射線量が自然放射線レベルをこえないように保ちなさい」という意味であると言い直すことができます。

国際放射線防護委員会(ICRP)が、福島原発の事故に対して放射線防護の考え方に関するコメントをだしました(http://www.icrp.org/index.asp、 (参考資料)。その内容では、従来とおり 2万-10万μSv (= 20-100mSv) の線量枠内の線量に設定して防護を徹底するように勧告しています(ここから世界各国の屋内退避、避難等の基準に関する参考資料が入手できます)。

掲載日:平成23年3月27日、平成23年3月30日改訂、平成23年4月10日改訂、平成23年12月28日改訂
【編注】
 文中の背景色表示は編者によります。
 原文で記載された「マイクロシーベルト」は μSv に、「ミリシーベルト」は mSv に変換しました。

【編注 】
上記によれば、自然放射線総量 : 1400μSv/年 / (365 x 24) ≒ 0.16μSv/h になります。
文部科学省は自然放射線を、宇宙線:0.29mSv/年、大地放射線:0.38mSv/年(出典:財団法人原子力安全研究協会「生活環境放射線」(平成4年))としています。
環境省はこれに基づき、大地放射線:380μSv/年 / (365 x 24) ≒ 0.04μSv/h として、これに 0.19μSv/h を加算した除染しきい値 0.23μSv/h を設定しています。

国際放射線防護委員会(ICRP)
国際放射線防護委員会( ICRP )からのコメント March 21, 2011 Fukushima Nuclear Power Plant Accident ICRP ref: 4847-5603-4313
東京大学医学部附属病院 放射線科 放射線治療部門による〔邦訳試案〕
邦訳-福島原子力発電所事故(下記引用)

緊急時に一般の人々を防護するためには、委員会は最も高い計画的残存線量に対して、20-100 mSv の枠(バンド)内で参考レベルを国内当局が設定することを引き続き勧告する(ICRP 2007, 表8)。
放射線源が制御できたとしても、汚染地域は依然残りうる。当局があらゆる必要な防護策を行い、人々がその地域を放棄することなく住み続けることができるようにすることが一般的であろう。その場合は、委員会は1 年間に 1-20 mSv の枠(バンド)内の参考レベルを選択し、長期目標として参考レベルを年間 1 mSv とすることを引き続き勧告する(ICRP 2009b, 48-50 段落)。

The 2007 Recommendations of the International Commission on Radiological Protection
平成23(2011)年1月28日、国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告(Pub.103)の国内制度等への取入れについて-第二次中間報告-
平成22(2010)年1月、文部科学省放射線審議会 基本部会-国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告(Pub.103)の国内制度等への取入れに係る審議状況について-中間報告-
平成20(2008)年1月31日、原子力安全委員会-ICRP2007 年勧告について(PDFファイル)

国際原子力機関(IAEA) | 外務省-国際原子力機関(IAEA)
原子力百科事典 ATOMICA | 日本放射線影響学会 (13-02-02-08)

◇ 文部科学省-日常生活と放射線--(別添資料)日常生活と放射線 (PDF:317KB)日常生活と放射線 (PDF:317KB)があります。
1人当たりの自然放射線(年間)(世界平均)2,400マイクロシーベルト/年
宇宙から0.39ミリシーベルト、食物から0.29ミリシーベルト、大地から0.48ミリシーベルト、空気中のラドンから1.26ミリシーベルト

◇ 財団法人原子力安全研究協会、新版 生活環境放射線(国民線量の算定)発刊年月 : 平成23年12月
平成4年に我が国の国民1人当たりの被ばく線量についてとりまとめを行っている。 本書は、その後の生活状況の変化を踏まえ、改めて自然放射線、核実験フォールアウト、職業被ばく、医療被ばく、諸線源による公衆被ばく、原子力・RI関連施設からの公衆被ばくについて最新の情報に基づき国民線量としてとりまとめたものである。
その結果、国民線量は 5.97mSv/年、そのうち、自然放射線による実効線量は、2.09mSv/年となった。
なお、今回の評価には、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の影響については、含まれていない。
【編注・自然放射線 ≒ 0.24μSv/h です】

◇ 京都大学原子炉実験所 放射線生命科学研究部門 粒子線生物学研究室
粒子線生物学研究室は、放射線、熱、圧力そして酸素の4つの物理化学的要因をストレス原として選び、 それらのストレスに対するストレス応答の仕組みを細胞と分子のレベルで調べ明らかにすることによって、生命が避けられない癌と老化の本体を解き明かすとともに、癌や老化を制御する技術の開発研究をおこなっています。 私達の研究成果は、「放射線発がんの標的がDNAではない」ことを支持し、「放射線発がんを多段階突然変異説」で説明できないことを強く示唆しています。(工事中です 2012-05-18 確認-研究目的

放射線計測Q&A
Q2-5.簡易な放射線測定器で自然の放射線と人工の放射線は区別して測定できますか?
A.ガイガーカウンタ等、放射線のエネルギーを知ることができない放射線測定器では、自然の放射線と人工の放射線は区別して測定することはできません。 自然の放射線と人工の放射線を区別して測定するためには、ゲルマニウム(Ge)半導体検出器やヨウ化ナトリウム(NaI)シンチレーション検出器等を用いて、放射性物質が放出する固有のガンマ線のエネルギーを測定して評価する必要があります。